新型プリウスのブレーキ欠陥問題

 トヨタ自動車が、レクサスのアクセルペダルの欠陥や新型プリウスのブレーキ欠陥で対応に追われている。これ程騒がれるようになったのは、トヨタ自動車の対応が、後手後手に回ったためである。
 実は新型プリウスのブレーキ欠陥の可能性については、インターネット「価格.com」のプリウスのクチコミ欄、昨年12月8日付けの“ブレーキが効かない!!”を読んでいたのである程度は知っていた。この「価格.com」クチコミ欄の面白いところ?は、頻繁に投稿する常連が存在することと、製品を擁護するガードマンみたいな連中が存在することである。例えば、プリウスのユーザーやトヨタ大好き人間であれば、プリウスの悪口や欠点を指摘する投稿があれば面白くないわけで、スレ主を徹底的に馬鹿にしたり、中傷した投稿をするのである。この12月8日の投稿に対しても最初はABSの作動が影響していると的確な回答があったのであるが、それから派生して、スレ主はABS装着の車に乗ったことはないのか、とか、挙句の果ては、自動車学校に行って運転の練習をやり直せだの多くのトヨタ擁護派から凄い反論があった。トヨタが、ABSのソフトを実際に修正したことにより、これらトヨタ擁護派の投稿は単に自分達の無知と馬鹿さ加減を露呈することになっただけであるが。

 そもそも私が「価格.com」のクチコミ欄の存在を知ったのは、現在使用しているカメラ、ニコンD40を購入する前に使用者の情報が無いか探していたときである。その時に最適なズームレンズの選択についてスレを立て、非常に多くの人から回答をいただき、参考になった。このクチコミ欄を見ていて分かったのは、礼儀正しく、真摯な姿勢で投稿しないとマニアみたいな常連派連中から突き上げを食らうことである。私の場合、幸いにもそのような投稿は無かったが。
 次に「価格.com」のクチコミを使用したのは、昨秋購入した4代目オデッセイの購入を決めた後からである。既にディーラーに注文して、納車待ちの時に「価格.com」のクチコミ欄を見ることを思いついてオデッセイのクチコミを見始めた。そしたら何とオデッセイのCVTの異音問題が書き込んであった。丁寧なことに音入りでビデオまで公開されていた。CVTの異音については、ホンダだけではなさそうだったが、このクチコミの内容は、ホンダの対応の悪さを指摘していた。

 要するにネットが普及した現代では、製品情報について個々の消費者が公開の場を利用して訴えることが可能になったのである。そして、自動車メーカーのお客様相談室か、どこの部署になるかは知らないが、ネット上で自社製品に対してどのような評価が下されているか、多分、調査しているのではないかと思う。もし、それをしていなければ、馬鹿である。

 小学生の時、よくプラモデルを作っていた。戦車とか、戦闘機とか。戦車などはモーターと電池内臓で実際に動くものがほとんどだった。しかし、何種類ものプラモデルを作っていれば、小学生でも設計上の欠陥商品であることくらい判別できる。今でも覚えているが、戦車の減速ギア部の金物構造の強度とゴム製キャタピラの張力とのバランスが合ってないために駆動しない戦車のプラモデルがあった。小学生心に思った。「このプラモデルを設計した人間は、ちゃんと自分で作って製品の確認をしているんだろうか?」と。

 車は10年も20年も過酷な条件で使用されるので設計も製造も大変だと思う。昔は、製品の欠陥で事故が生じても、消費者が製造者の過失を立証しなければならず、泣き寝入りするパターンが多かったため、製造物責任法ができた。これにより製造者は製品の欠陥により事故などが生じた場合には実質、損害賠償責任を負わねばならなくなった。製造者の責任は重くなったのである。今回、3日夜にトヨタの副社長はプリウスのブレーキの問題を「フィーリングの問題」と言った。5日夜にはトヨタ社長は記者会見でも欠陥を否定したらしいが、国内外で200件以上の苦情が出ても欠陥ではないのか

 悪質なのは、口では「フィーリングの問題」とか、「欠陥ではない」と言いながら1月生産分からABSのコンピューターソフトを内々で手直ししていたことである。「価格.com」のクチコミを見ると分かるが、質問者の多くは、内気で人の良い人達ばかりである。最初から車を欠陥と言っているのではない。ひょっとしてこの症状はおかしいのではない?と聞いているのである。ディーラーやメーカーにも聞きづらいから、ネットで聞いているのである。この内気な人間達の問いをメーカーが真摯に聞く耳を持っていたら、こんなに大きな問題にはならなかったはずである。

 まともな会社は、クレームを大切にする。クレームは、その会社や製品のことを考えてくれている大切な意思表明である。ユーザーがその会社や製品のことを考えていなければ、ユーザーは黙ってさっさと他社の製品に乗り換えるのである。クレーマーと呼ばれる人達もいるようであるが、そういう人は一部であろう。

 私はメーカーによる自社製品についての認識が足りないのが、このような問題が生じる主原因だと思う。三菱自動車の不祥事が生じたとき、社員は「うちの車の性能は他社と変わらないのに」と言っていたが、あれだけ錆びやすい車体とマフラー、水漏れするライトを採用しておりながら、何が他社と変わらないんだ!認識不足もいい加減にしろと思った。金○のラーメンは、一時期マルタイ棒ラーメンの芯が残ったような麺を出していた。マニュアルは徹底しているようでどこの金○も同じ拙い麺だった。ラーメンなんか、店長がどんな製品を客に食べさせているのか、自分が一口食べてみれば分かるだろうに。暫くしたら黙って麺の種類が変わってこの問題は解消されたが。気が付くのが遅いのである。要するに鈍感感性が鈍いのである。今回のトヨタの対応も鈍感、感性の鈍さに起因したといっても良いと思う。

 トヨタは好きではないが、物造りで生きていくしかない日本にとっては、重要な企業である。そのトヨタがこの体たらくでは日本の将来は危ういと思う。世の中では、標準化だ、ISOだ、というが、この流れを作ったのはイギリスだという。日本はこういうことは基本的に苦手である。ITも苦手である。だから日本はこれからも物造りに励むしかないと思う。しかし、地球温暖化が叫ばれる中、物欲追求の時代は終わりに近づいているとも思う。

 政治家達は、日本の進むべき道筋、方向性を示す必要があるにもかかわらず、民主党の自民党と変わらない金権体質は一体何なんだ。小沢に物も言えない閉鎖体質は自民党以下ではないか。だいぶ幻滅して来た。トヨタだけでなく、民主党も鈍感で感性が鈍そうである。日本の将来は危うい

(2010年2月6日 記)

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